DeepL (ディープエル)で翻訳すれば、英語が話せなくても簡単に海外の人とコミュニケーションが取れるようになっている昨今。 Google翻訳やDeepL のような機械翻訳の技術革新は凄まじいですね。
人間の代わりに翻訳できるようになることは無いのだけれど(後ほど理由を説明します!)、翻訳を仕事としている私も感じるのは、機械翻訳で訳せちゃう場は日々増えているという事。機械翻訳のお役立ち度はホントにすごい。
そんなすごい機械翻訳だから、是非知らない人には知ってほしいDeepL翻訳ウェブ版の使い方、もとい機械翻訳の使い方。
意外と使い方のコツを分からずに「使えねー」「全然違う意味になる」という経験をされている方や、良くわからないままGoogle翻訳に突っ込んで出来た訳文(英文)をそのまま使用されている方が多いのも事実。だからこそ・・・
今日は、Google翻訳とDeepLを存分に働かせて上手いこと翻訳するためのポイントをお伝えします。
DeepLなどの機械翻訳の仕組みを理解しよう
冒頭から機械翻訳、機械翻訳と連発しましたが、皆さんがスマフォやPC上で身近に利用しているGoogle翻訳やDeepLなどのオンライン自動翻訳は、ニューラルネットワークを利用した機械翻訳になります。
ニューラルネットワークとは:人間の脳神経を抽象化し、情報の分散処理システムとしてとらえたモデル。ニューロネットワーク。神経回路網。(コトバンクより)
ニューラル機械翻訳
機械翻訳の歴史は古く、1933年にロシアで世界初の機械翻訳特許が出願されているそうな。それ以降、機械翻訳の手法は、①ルールベース機械翻訳(Rule Base Machine Translation)、②統計的機械翻訳(Statistical Machine Translation)、そして現在主流の③ニューラル機械翻訳(Neural Machine Translation=NMT)と進化してきたのです。
- ルールベース機械翻訳:文章や単語をバラバラにして逐語訳
- 統計的機械翻訳:対訳コーパス(=大量の原文と訳文のペア)を利用する統計翻訳
- ニューラル機械翻訳←いまココ:単語列に分解し、各単語を数百から数千次元のベクトル空間上にマッピング。そのうえで単語間のつながりの自然さや各単語への注目度合いなど、あらゆる情報をベクトルで表現し、演算によって翻訳を実行。
ニューラル機械翻訳、通称NMTは所謂ディープラーニングというやつですね。ニューラルネットワークを使い蓄積したデータをAIに深層学習させ、文全体から訳出することで、文脈に沿った自然な翻訳を可能にしています。
そう、Goole翻訳やDeepLで訳された文章は自然な感じで、流暢に聞こえちゃうんですね。それが正しいとは限らないというのが落とし穴です。
文章全体を元に訳すといっても、機械学習は文章を理解するわけではないですから。機械翻訳が目指すところは人間の持つ解釈して表現するという想像力の世界ではない!ということを覚えておくとGoole翻訳やDeepL翻訳に上手い翻訳をさせる手助けになります。
機械翻訳の役割
Google翻訳やDeepLに代表される最新の機械翻訳ですが、これらの進歩が向かう方向は人間の代わりではなく、人間じゃなくても出来るところを時短することです。
料理に例えれば、時短調理的な感じです。何を作るかは人間が考えて、機械に任せられる部分は作業を任せるんです。
機械翻訳による人間の時短。Google翻訳やDeepL翻訳に任せられるのはどんな作業でしょうか?
世界最大のメディアローカライゼーション会社、IYUNOーSDIのCROはこう言っています。
「創造性に欠ける作業を取り除き、解釈や創造的プロセスに多くの時間を費やせるように」
つまり、
- 解釈の必要が無い明確な内容と構文の文章
が機械翻訳、GoogleやDeepLで訳しやすいということ。
機械翻訳は解釈しません。これ重要。これを踏まえた文章を書いてDeepLやGoogle翻訳にぶちこみましょう。
クリエイティブな文章でも、クリエイティブな部分は一部で、残りは単純な構成の文と単純な意味の単語で出来ているので、全体のボリュームで見ると機械翻訳は結構あちこちと使えます。
単純な文章を訳させる、そして訳されることを前提に単純に書かれた文章をタスク処理するのが機械翻訳です。
DeepLが出来る事・出来ない事
DeepL翻訳で出来る事
別言語で「理解可能」程度の文章へ瞬時に変換する
Goole翻訳もDeepL翻訳も、打ち込んだりアップロードした文章は一瞬で翻訳可能。出来上がった訳=英文や和文は自然体とは言えない文章かもしれません。また、途中難解な一文が訳飛ばしされたりします。
それでも、生成された訳文は、全体的に見れば、十分理解できる構成の文章になっており、大意が理解可能かと思います。
基礎的な言語知識があれば訳文の内容が大体理解できる
完璧ではない英訳や和訳でも、基本的な言語能力がある人が読めば、原文が言いたかったであろう内容を訳文を参照しながら理解できます。ディテールが多少間違っていても、コアなメッセージを理解するには十分であることが多いのです。
なお、先ほど少し触れましたが、AIが訳した文章は流暢であっても、訳が正しいとは限りません。原文の性格(カテゴリー、どういったトピックに触れているのか、そのトピックについて自分はあらかじめ何を知っているのか)を踏まえた上で訳文を読む必要があります。
そういう意味で、機械翻訳を使う人間を選ぶツール。DeepLを代表とする機械翻訳を使いこなすには言語能力、国語能力、ある程度ロジカルに考える能力が求められます。
スピードが要求される場でDeepL翻訳が活躍
ターゲットとなる言語に精通した人間を必要な時にスグ連れてくるのは難しい事も多いです。人を雇う予算が無いとか、人を雇うほどでもない内容かなと感じる場合もあるでしょう。でも内容は早く知りたい。そんなとき、「とりあえず分かれば」で翻訳をするのにGoogle翻訳もDeepL翻訳も活躍します。
「Google翻訳やDeepLはスピードが大事な場で使う」そう覚えておいてください。
正確さや自然な文章の流れは機械翻訳の後で編集
なお、「取り合えず大体の内容は分かる文章」から正確性を高めたり、自然な流れの文章にアップグレードするには機械翻訳が生成した文章を編集すれば良いのです。ポストエディットというやつですね。
実際、機械翻訳+人力による編集という手法は個人だけでなく、多くの企業も取り入れています。大量なウェブサイトの翻訳など、まず機械翻訳で生成した文章をそのまま載せておいて、サイトへの訪問数が多くなったページに関しては人間が訳文を編集するという感じで。
編集を雇うのも、最初から翻訳を雇うのも金額は同じであることが多いので、閲覧が増えてきたページは、原文から翻訳依頼を業者を通してプロに依頼するのが品質もベスト、そして時間効率(タイパ)、コスパも良いです。
DeepLが出来ない事
前述したように、機械翻訳は文章を解釈しません。意図を理解しません。
空気も読めません。文化的な習慣を考慮して、意図を加味した文章に訳すことはできません。
動詞の主語が誰なのか明記されていない文章が問題となることは当然です。加えて日本の「はっきり言わないで読み手に行間から理解してもらおう」とか「耳障りのいい言葉や難しい単語だけ使って何となくそれっぽい雰囲気だけ出した文章」は意味不明な訳文を作る元になってしまいます。
以上のGoogle翻訳やDeepl翻訳が出来る事と出来ないことを踏まえた上で、翻訳をする前に、どの文章のどの部分を任せられるか頭の中で整理しておきましょう。
人間とAIに分業させること、どこをAI翻訳に任せるのか判断する頭を人間が持つことが機械翻訳を使いこなすためのカギになりますね。
また、元の文章をGoogle翻訳やDeepLが訳しやすい文章にしておくことも必須です。
DeepLで翻訳しやすい文章5つのポイント
1.平仮名は漢字に変換すべし
同じ音で違う意味の単語はたくさんあります。漢字を使用できる部分は漢字にすることで、誤訳を防ぎます。
2.正式名称を省略しない
機械翻訳エンジンも日々単語が追加されていますが、それでもすべての略語には対応していません。わざわざ誤訳のリスクを取るよりも、略称を避けて正式名称を記載するようにしましょう。
3.固有名詞や専門用語をあらかじめ英語で書いておく
原文に固有名詞や専門用語など、機械翻訳が訳せなそうな語彙があったら、最初からターゲット言語(訳文の言語)に書き換えておきましょう。それら用語を一括置換しておくことで、ポストエディット(訳文の手直し)の手間を減らせます。
4.不要な改行を減らす
改行すると新たな文と認識してしまうため、文章が2つになってしまい意味が変わってしまいます。無駄な改行を無くすことで、機械翻訳の質を簡単に上げることができます。
良くあるんですよね。エクセルで文章の途中なのに改行したり、スペース入れたりしてるケース。絶対だめです。セルの設定を「文章を折り返して全体を表示する」に変えて改行させるようにし、自分が好きな所で改行するのはやめましょう。
5.日本語を補う
日本語は書かずに推測させて文の意味を構成している場合が多いので、情報をきっちり補完する必要があります。
主語が誰で、その主語がかかる目的語や述語がどこなのか、また各アクションが起こる自制はいつなのかを明確にしましょう。
主語「わたし」「私たち」の使い分け
主語については一人称単数なのか複数なのかもハッキリさせましょう。会社としての方針や意見を書く際には「私たち」、一個人の意見であれば「わたし」を使います。
日本のビジネス文書では主語は省略されることが多く、生まれ育ちも仕事も日本だけしてきたという方は、この辺りの「主語は誰なのか」の感覚が余りないと思いますので気を付けてください。
1文が長すぎると曖昧になる
そして、1文は短く簡潔に。1つの文章で言いたいことは1つ。
英文だと無駄に1文が長いって良い文章とならないので余りないのですが、日本人は句読点と接続詞を多用して、1段落を長い1文で終わらせることが多々あります。ダメです。歯切れよく、1文1文は曖昧さを生まない無い内容に仕上げて切り上げてください。
接続詞で、「ので」「から」といった因果関係接続を2つ以上1文で入れない事。「けれど」「ですが」などの逆説も1文の中で2つ以上続けないように。
以上5点、Google翻訳やDeeplで翻訳するための原文を書く上での注意事項でした。
DeepLの使い方 まとめ
ここまでご覧になってわかるかと思いますが、機械翻訳に良い仕事をしてもらうには、人間が良い仕事=良い原文を投げなければ行けません。
当然ながら、自分で書いた原文を読みかえす必要があります。
そうです。多くの人は自分が書いた文章、もしくは誰かが書いた翻訳したい文章を、Gooel翻訳やDeepL翻訳に投げる前に読み返して居ないのです。まず、元文を読んでチェック、そして修正。原文の質を上げることが、機械翻訳の質向上につながります。
原文を読み直す、修正する、翻訳にかけるという3ステップを習慣づけて、明日からのグローバル・コミュニケーション能力向上に生かして見て下さい。