偽ブランド品の見分け方 は簡単・・・と思われていたのは一昔前。
Gucci、プラダ、ヴィトン、シャネル、ディオール、モンクレール。入荷すれば即完売となるような人気ハイブランドのバッグ、財布、ジュエリー、洋服。そんな世界的に有名な憧れ高級アパレルの偽ブランド品(コピー品)のクオリティが上がっている。そのレベルの高さはオリジナルに匹敵、いやオリジナルを超えた品質だったりする。
そんな今日における、偽ブランド品製造の裏側を知れば、偽ブランド見分けることの難しさを痛感するだろう。
そして、コピー品を無くすために消費者が「学ぶ」ことが必要不可欠であることも理解できるのではないだろうか。「学ぶ」とは偽ブランド品を見極める目ではなく、偽ブランド品を作らせない構造つくるために身に着ける知識・・・だ。
なぜなら、偽ブランドの現実は一昔前より大きく進化しているからだ。
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本物よりもクオリティの高い偽物(コピー)があった
一昔前は偽ブランド品と言えば粗悪な中国製のコピー品だった。明らかにニセモノと素人でもわかるような品質の。
だが、現代のコピー品の中にはクオリティが高いものも多い。そのクオリティの高さは本物のブランド品と同じか、またはそれ以上と言われている。
アリババの創業者ジャック・マー氏も認めている。
“The problem is the fake products today are of better quality and better price than the real names.”
「問題は偽物の品質が本物より高く、価格は本物より安いという事だ。」
なぜ、そのような事が起こるのか?
偽ブランド品のクオリティが高い理由
いくら目が肥えた人でも偽物を見分けられないのは仕方ない。なぜなら、偽ブランド品が正規のブランド物と比較して何も劣っている点が無いのだ。全く同じ・・・違うのは「ブランド名」だけだ。
実質は「本物」なコピー品
ブランドの本物と偽物が全く同じにできるのは、同じ工場で製造されているからだ。
本物とブランドコピー品は同じ工場で作られる
実はコピー品は、コピー品製造業者によって作られるのではなく、正規の下請け業者で作られているのだ。
つまり、正規のブランド品を作った同じ縫製職人が、同じ機械を使い、同じ工程でコピー品を製造している。もちろん、素材も全く同じだ。
ブランド品の海外生産と偽物量産の関係
コピー品輸出の最大国は中国。中国で生産されるハイブランドは多い。また、以前別の記事で触れたようにイタリアの法律ではMade in Italy と謳っていても、他国で生産することが可能であり、中国がそのMade in Italy生産国である場合も多い。
このようにして、ハイブランドと全く同じ工場で、正規のハイブランドと一緒に作られたニセモノが多数出回る事態となっているのだ。
また、ヨーロッパにも名だたるハイブランド生産―ドルガバ、ヴェルサーチ、マックスマーラ、アルマーニ、モンクレールなど―のハブとなっている国がある。東欧の旧ソ連諸国(モルドバやウクライナ)、それにルーマニア、ブルガリア、トルコ。
それらのハイファッション・ブランド工場でも同様にも偽造品が作られている。
2006年から2010年までモンクレールのアパレル生産管理責任者だったGiuseppe Iorioは、ルーマニアやブルガリアにあるモンクレールの工場でモンクレールの正規品とコピー品が同じラインで製造されていたのを目にしている。
Mishcon de Reya社で知的財産権訴訟を専門とする弁護士、カサンドラ・ヒル氏も下記ファッション誌の取材にこう答えた。
“They are made in exactly the same factories, with exactly the same raw materials [as authentic goods], but they do not use the names.”
「本物は偽物と全く同じ工場で、本物と全く同じ素材で作られ、名前だけが違うだけだ。」
https://fashionista.com/2018/03/counterfeit-knockoff-handbags-authenticity
しかも、これらハイブラの下請けをしているヨーロッパのアパレル工場労働者の賃金は、中国の同業者よりも低い。
本物のブランド品も偽ブランド品も正規工場で作られる背景
原因の根本は、収益を最大化したいブランド企業にある。
どういうことか。
コピー品の高品質化の原因は、ブランド企業の巨大化=グローバル化と関連している。
ハイブランドのファストファッション化
ファストファッション業界における下請け縫製工場での劣悪な労働環境、低賃金、長時間労働については度々話題に上がる。しかしながら、ファストファッションの何十倍も高い定価をつけているハイブランドの生産体制も実態は同じなのだ。
かつてMade in Italy やMade in France だった大御所ヨーロッパのラグジュアリーブランドも、今やほとんど国外生産。主に貧しい国でチープな値段の工場生産を行っている。
下請け工場の受け取る金額も変わらないので、ハイブランドとファストファッションの違いと言えば高級ブランド企業はより多くの営業利益を得ている点だろう。
正規ブランド製造工場の低賃金問題
多くのヨーロッパのハイブランドは、Made in Italy を謳っている有名ブランドを含め、ルーマニアを代表とする貧しい国にてアパレル生産を行っている。
file:///C:/Users/Masako/AppData/Local/Temp/CCC-GE-Report-DEF-LR-spreads.pdf
これらのアパレル生産従事者の賃金は、中国の同業者よりも低い。
例えばルーマニアでは月の生活に必要な収入は1500ユーロが適切としているが、アパレル工場の従業員が稼ぐのは平均300ユーロほどで手取りは200ユーロである。以下のリンクに詳細データがある。また、ハイブランド下請け搾取については以前にも取り上げた。
http://library.fes.de/pdf-files/bueros/bukarest/15094-20190606.pdf
ハイブランドに徹底的に搾取される縫製工場の従業員たち。この背景も、コピー品製造を加速させる要因になっているのではないか?
コピー品を作ることで、少しでも生活費の足しになる、もしくはコピー品も売らないと生活できない状況を作っているとしたら?
それは発注元であるブランド企業の責任である。
ハイブラにおけるデザインの劣化
今や、ハイブランドは品質においてもファストファッションより高いとは言えない。材質の低下やモデルの簡易化など、技術的な要件の低下がコピー品の製造しやすさを増す原因にもなっている。
オリジナルを作るのが簡単だから、コピーが簡単にスピーディに作れるという事。
仕入れ価格の低下
材質の低下やデザインが簡易化したのは、ブランド企業が収益を増やすための手段だった。
グローバル化したブランドは収益の最大化を目指した。利益率は、原価を下げれば当然あがる。それにはロジスティックスの集約や最適化以外にも、原材料の質と値段を下げる事、生産工場でのコストを最低に落とし込む事が必須になる。
価値提供のマーケティング依存
アパレル企業のクリエイティブな仕事はデザインではなく、マーケティングに注力されるようになっている。
服飾品自体のクオリティではなく、SNSや広告によって、ブランドの付加価値を創造するようになったこと。
つまりイメージは虚構。
もちろん、常にマーケティングはブランドイメージを高めるために必要ではあるものの、かつては品質もブランドたるものであったはずだ。それが、服飾品を人々の欲求の対象に仕立てれば、それでいいという価値観になってしまった。
「購入者にとっては大事なのは、ブランド品を気に入るかどうかだけ。他の要素は購入者にとって何の意味もない」ガリアーノやシェルビーノのブランドマネージャーは言う。
購入者は品質なんてどうでもいいと思っている。これは言い換えれば、品質や職人技の価値の分からない消費者の無知さを前提条件としたマーケティングということだ。
高級ブランド品の消費者を教育する必要性
消費者よ、目を覚ませ!
各々が欲しいものを買えばいい。そうかもしれない。ただ、この偽ブランド品に価値を見出す考え方が及ぼす悪影響をもっと大きな世界観で分析してみる必要がある。
品質を評価できない消費者
偽ブランド品を買う理由としては、ブランドを所有していることを他人に誇示する、要するに見栄が大きい。
これは正規ブランドの購入者にも多い。クオリティに関心のないブランド購入者が求めているのは、ブランド品によって自分の価値を上に見せたいというステータス欲求を満たすことだ。
見栄のためにブランド品やブランドのコピーを選んでいるのだが、消費者にその自覚がない。資本主義に洗脳されてブランド品を得たいという物欲に駆られているのに、本人は自分の思考プロセスに気づいていない。盲目な消費者たち。
自覚がない洗脳状態の人が大多数になると、品質の価値を評価できる人間が相対的に少ない社会になる。
ブランド名を重視する風潮の弊害
高品質が評価されない世の中に
品質を高めるには手がかかり、ゆえに人件費がかかる。原材料も高くなる。高い技術力も必要となりスキルのある人間が必要になる。要するに原価が高い。当然、その事業で生計を立てるなら売値も高くなる。
品質の高いものに価値を見出さない、ネームバリューのみに価値を見出す社会になると、品質の高い商品を作り出す規模の小さい売り手や作り手が減り続け、高品質商品のバリエーションが減ってしまうのだ。
ハイブランド企業による労働者搾取を加速させる
ファストファッションの発展途上国での労働搾取は有名だが、前述のとおりハイブラも大抵は同じ手法で利益を拡大させている。
品質に価値を見出さず、ハイブランドが感じさせるステータスだけを購入基準をするならば、消費者の洗脳しやすさに味をしめたブランド企業は、ますます労働搾取や原料および縫製のファストファッション化が促進されるだろう。
低レベルな商品に高値が付くことは、消費者の思考停止を加速させるだけでなく、より劣悪な素材を作り出し、安い労働力を搾取を増大させることにつながるのだ。
偽物ブランド品を減らすため
ブランドコピー品の威力を減退させるには、消費者が合理的に考え判断する必要がある。それには消費者の教育が必要だ。
品質の価値について、洗脳と同じ量の情報量を同じスピードで拡散していく必要がある。
今までブランドの価値について考えたことない人にとっては、品質について考える良い機会になり、ブランド品への考え方が変わるかもしれない。
ブランド品の偽物の見分け方: 「本物」と「偽物」の唯一の違い
ガチ・ステータス欲求のブランド購入者層は正規ブティック経由で必ず購入する人も多く、無知なままでも問題なさそうだ。
何となく知っているブランドだから買っていた層なら、モノの価値について教育を受けて無知から脱却し、品質や技術的な希少価値から品物を購入できるようになるかもしれない。
しかし、一定数(大多数)はお金もケチってステータスだけ欲しい人ら。身に着けるものだけではなく、すべてにおいて見栄が基準の人間には、何を言っても通じないであろう。そういう人らを無知な状態から教育するのは不可能に等しい。
ということで、偽ブランド品はこれからもケチしたいけどステータスは欲しい層から支持され続けるだろう。
さて、本物を見分けるには正規代理店で買えばいいという話。だが、偽物だろうが本物だろうか、品質・材料・デザインに差がまったく無いなら、それらを見分ける意味は?
違いはたった一つ。消費者の使うお金がブランドに行くか、製造に携わった別の業者に行くか、それだけだ。