多くの人にとって、子宮を取る選択をする事は身体的なダメージと共に、大きな精神的ダメージを伴うのだと思う。でも、 再発 が怖い子宮頸がん「腺癌」。
子宮頸がんにかかるというと、通常は扁平上皮癌になるということを指すらしい。8割が扁平上皮癌squamous cell carcinoma、残り2割が腺がん adenocarcinoma。腺癌はマイナー。
陣地を拡大していくように周りに広がっていく扁平上皮癌に対し、腺癌はスキップして病変が点在する特性=スキップリージョンがある。なので、腺癌と診断された場合、浸潤ガン(Invasive)になってはいない上皮内腺癌(AIS)程度でも子宮摘出が王道の基本ガイドライン。
でも、上皮内腺癌の患者で円錐切除を最終治療で経過観察にする人、特に若い人なら多いはず。再発の心配をしながら・・・。
再発どれくらいあるのか。再発率についてはモヤモヤな表現しか見たことが無いが、実際どうなのか。
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上皮内腺癌 円錐切除後の「再発」の可能性はどれくらいある?
色々な日本語のサイトで、上皮内腺癌で円錐切除をしても2割くらいは残存や再発があると読んだけれど・・・。それは断面が陰性の人のみなのか、それとも陽性の人も含んでいたのか・・・。
米国の国立生物工学情報センターの文献をもとに、AIS(上皮内腺癌)のConservative Treatment=子宮温存と経過観察という治療選択のデータを読み取って、その安全性について考えてみる。
断面陰性と陽性での差
AISの長期経過観察については、データが余りないらしい。最長で8年くらいまでしかAIS患者の経過観察データがないのだとか。正確に分析するには10年以上経過観察をしているデータが必要らしい。
以下、今あるデータに基づいた検証。
そこから結論すると、再発の危険性は円錐の断面が陰性なのか陽性なのかで判断が分かれる事になる。
2011年と13年の文献を見てみると、両方マージン陰性なら再発の可能性が低い事に言及している。陰性なら再発の可能性やスキップリージョンで奥に残っている可能性は低く、陽性ならば高くなる。
これら検証ソースにおいて、断面陰性で上皮内癌が再発したOr残存があった人はいたが、浸潤ガンが出てきたケースは無かった。
ゆえにマージン陰性なら、円錐切除術で治療を完了し、継続的な検診を受けるという選択肢も勧められる。
データから見る断面陰性の再発率
1.円錐切除で断面陰性だった78人の患者のうち、45人が単純子宮摘出。2人にAIS残存が見つかった。(4%)一方、断面陽性だった18人のうち10人が単純子宮摘出。3人(30%)にAISの残存がみつかった。
経過観察をした28人からは1人だけAISが見つかった。
2.AISで子宮摘出を行った患者のうち、円錐切除術で断面陽性だった患者の48%(35人中17)がAIS残存あり、陰性だった患者のAIS残存率はこのケースで0%(30人中ゼロ)だった。
経過観察を選択した136人(円錐後に細胞診、組織診、HPVテストで定期健診)のうち2人に腺癌とAISが見つかった。腺癌は断面陽性だった患者から発見されて、陰性断面だった患者からでたAISの一人という結果だった。
断面陰性での再発リスクは低いが安全とは言えない
別の文献からのデータをもとに、断面陰性での再発リスクについて調べてみた。
数回の円錐切除をした後にAIS発見
172人の円錐切除を受けた患者のうち、101人(58.7%)は子宮摘出をせず、経過観察を行った。うち72人は一度の円錐で断面陰性。26人は2回円錐で陰性。2人は3回の円錐で断面陰性となった。
繰り返して円錐を行った患者の5割(最初の円錐で陽性だった人)は追加で取った部分からAISが検出された。
この経過観察中だった101人のうち、2人はAIS再発(18-37カ月の経過観察中)。浸潤ガンはどの患者からも見つからなかった。
AISを再発した二人が何回事前に円錐切除をしていたのか分からないのだけれど、この結果全体を読んでいると数回円錐をする必要がある場合はリスクもあがるんだろうなと思う。
最高でもAIS 浸潤は無し
何にしても、ここでAIS再発は見つかっても浸潤状態まで進行したものは見つかっていない。
ただ下記の例を読んで、例外は存在するのだと分かる。
円錐切除術で断面陰性とでた1人のAIS患者。その後、単純子宮摘出をして何も見つからず、以降は年1回の検診となった。14年後、リンパ節に腺癌の転移が見つかった。
例外中の例外だと思うし、子宮も摘出していての再発なので、円錐だけだと再発が高くなるわけではない。断面陰性で残存がなくても、転移があり得無いわけではないという事。こういう経過観察をしても防ぎようがない事も起こりうる。
参考文献
HPV陽性は再発率と関係あるのか
経過観察でHPVテストも行う事もあるらしいけれど、それで再発が予測できるのか。下記のデータを参照してみた。
ハイリスクHPVは再発の可能性大
AIS診断で円錐切除を受けた124人のうち、86人を経過観察したところ3人が再発。120人がHPV検査もうけていて、その96%である115人がハイリスクHPV陽性。
だとするとハイリスクHPV陽性でも、その後にガン再発する可能性が高いとも言い難いことになる。
だってそもそもHPVポジティブの状態にあってAISになって円錐切除受けた人が多いだろう。その中からサンプリングしてもハイリスクHPVが見つかる可能性が高いのは当たり前かと。で、再発するのはマージン陰性で2~10パーセントほど。
ガンになる人はHPVに感染しているけれど、HPVに感染している人はガンになるとは全然言えない。
HPVってそもそもかなりの人が感染してるんではなかったっけ?HPVが原因であると分かってる以上、根本的な解決をするには男女問わずワクチン義務化するか、さもなくば一生性交渉を持たないか・・・。
AISとCIN2,3(扁平上皮高度異形)混合タイプのほうが 再発 率が低い?
ちょっと変わったデータもあった。上皮内腺癌と扁平上皮異形成との混合が見つかった人よりも、上皮内腺癌のみ単独であった人のほうが再発やAIS残存率が高かったというもの。
それがたまたまでなく、どこのAIS患者を対象にしたデータを取っても同じ統計ならば、腺癌だけ見つかった人のほうがリスクが高いという事になる。
ソースはInternational Journal of Obsteristics
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1471-0528.14808/full
結論 経過観察は厳重に
どの文献でも共通して述べられているのが、断面陰性で経過観察とした場合もフォローアップを入念に行う事の必要性。
患者の今までの経緯を把握している医師の元でしっかりとフォローアップ=定期健診をしている事が再発した際も早期のアクションにつながる。たとえ術後5年が経過して、経過観察期間が終わったとしても、必ず年に1回は決まった医師のもとで検査を受けよう!
今出ている数値は今後変わるかもしれないけれど、大きく変化することは無いだろうから、経過観察で進行したガンが見つかったら運なのかも。(進行速度が異様に早い急に進行したガンだった。見つかりにくい場所を原発に発生した。など)
だって再発は可能性的にはレアな上、進行した状態で見つかるのは更にレアってことなのだから。